宮本武蔵の光を描いて。
精神と肉体の双方を使って体感する空間マンガ、『最後のマンガ展』は、新しいメディアだった。しかしそこで表現されていたメッセージは、古来私たち人間が語り継いできたフォークロア=昔話にも似ている。「闇と光の物語」だ。もちろん簡単に言うつもりは毛頭ない。井上も、それを簡単に表現しようとはしていない。『バガボンド』はまだ続いている。宮本武蔵は旅の途上にある。それは、光を探す旅だ。だが今はまだ闇の回廊を歩き続けねばならない。でも、私たちは今ではもう知っている、その闇の先に光が待っていることを――
2010年8月25日発行