Coyote No.53 for Readers『私の生きるここ』

 Coyoteは今号で創刊10年を迎えた。2004年9月の第1号、森山大道から今号の星野道夫まで、途中1年半のお休みを挟んで通巻54号を数える。10周年を記念して、Coyoteにゆかりのある詩人や画家、作家、写真家の方々にコメントをいただいた。詩人の谷川俊太郎さんはこうだ。

「いろいろな10年があります。0歳から10歳までと、70歳から80歳の間の10年は意味が違う。Coyoteはよちよち歩きの赤ん坊からようやく小学生の4年生になった。あっという間だったでしょう。でも10歳から20歳の10年が一番大事です。そこで何をするか、何ができるか、20歳になったらまたいらっしゃい。そうしたら20歳から30歳までが一番大事だと言ってあげる。でもその時には僕が生きていないね」

 そう言うと谷川さんはけらけらと笑った。
 創刊号で谷川さんに「コヨーテ」という詩を書き下ろしていただいた。そして2010年1月号ではアラスカに誘った。谷川さんから、アラスカという場所に住む人たちに訊いてほしいことがあった。古老のインディアン、ストーリーテラーの先住民はもちろん、新しく移住して来た白人にも会ってほしかった。人生の畏れ、喜び、悲しみ、この土地で暮らすことを、谷川さんのみずみずしい感性を通して、もっと理解したいと思ったのだ。アラスカで詩人は詩を4編書き、本を読んだ。一度だけ会ったことがあるという星野道夫のことを訊いた。

 よく覚えていない、と、谷川さんは笑った。正直な言葉に少し戸惑った。 一本の木によらず 一羽の鳥によらず 一語によって私は人(「旅」谷川俊太郎より)
 詩人はゆっくりとアラスカの風景の中にいた。

 Coyoteは旅を続ける。もし道に迷うことがあればーー当然のように今日にも迷うことは明白だがーーいつもこう思うのだ、谷川さんならどうするだろうと。谷川さんの言葉を胸に抱いて、詩人の軌跡を追えばいい、轍を踏んで先に進むことだ。後10年、いつも私の生きるここを求めてその路地を右へ。

                       Coyote編集長新井敏記

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Posted on 2014/09/18
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