10 days 行商日記 in New York #day6
今年6月、安西水丸さんのシルクスクリーン作品をまとめた『ON THE TABLE』が出版社Baciから刊行された。
Baci代表の内田有佳さんは新刊を胸にNYへと旅立った。
届きたてほやほやのNYでの行商風景をお届けします
#6日目
Mr.Mitsuとの出会い。
昨日の夜、Printed Matterから取り扱いOKのメールが来ていた。
まずは5冊から始めたいということと、掛け率など諸条件が書かれていた。とにかく嬉しい。ニューヨーク取り扱い一号店が決まったのだ! 5冊を梱包して、朝一でチェルシーへ向かった。
Printed Matterでは契約書にサインをして、あっという間に納品完了。契約書といっても内容は最低限で、掛け率や、送料をどちらがもつか、最初に何冊納品したかを記入するだけ。持ち込みをした時も思ったけれど、Printed Matterはどのステップもとてもスムーズ。受け入れ体制が整っているので話も早い。受付の彼女にお礼を言って、一昨日訪ねた192BOOKSへ再び行くことに。
今度はアート系のバイヤーに会うことができた。気さくな彼は、本を見ながら“すごくいいね!”と言う。ならば……と期待するも、ディストリビューターがいないと取り扱いは難しいとのこと。気を落とす私に、親切にアメリカの代表的なディストリビューターの名前を教えてくれた。〈D.A.P.〉というそうだ。これについては日本に帰ってから調べてみようと思う。
そうこうしているうちに、先輩ライターのMさんからLINEが届いた。McNally Jackson Booksの担当者から連絡があったが、今回は取り扱いが厳しいという。サンプルをカウンターに置いておくから、ピックアップしてとのこと。追い打ちをかける悲しい知らせ。自分でプレゼンせずに、本を預けてきたことを後悔する。直接話していれば何か変わったかも……と思いつつ、店へ向かった。
マクナリージャクソン到着。カウンター裏に置いてあった本を受け取る。担当バイヤーのカーリーにはこの日も会えなかった。せめて……と、日本人スタッフのMitsuさんを呼び出してもらうことにした。
Mitsuさんは代官山蔦屋書店の三條さんに紹介してもらった方で、もちろんお会いしたことはない。昨日はMitsuさんも退社後で、挨拶しそびれていたのだ。バックヤードから出てきてくれたMitsuさんは安西さんの本をじっくり見てくれた。そして「もう一度僕から話してみます!」と言う。Mitsuさんはもともと六本木ヒルズのTSUTATAで働いていて、去年ニューヨークへ来たばかりだそう。Mitsuさんの提案に何度もお礼を言って、本を預けて店を出た。
書店営業を初めてまだ3日目。まさかこんな出会いがあるとは思ってもみなかった。簡単に諦めてはいけないのだな、と思う。夕暮れのビル街を歩きながら、じわじわと感動が押し寄せてきた。
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《 INTERVIEW 》
-- 安西水丸『ON THE TABLE』ができるまで --
Baci 内田有佳さん
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《プロフィール》
内田有佳 うちだ・ゆか
1982年生まれ。編集者。Baci代表。 大阪芸術大学映像学部を卒業後、編集プロダクション勤務を経て、フリーランスのエディターとして活動する。2016年、出版レーベルBaci(バーチ)を立ち上げる。
http://bacibooks.com/
安西水丸
『ON THE TABLE』
2014年に急逝したイラストレーターの安西水丸。アトリエに残された作品を整理するなかで見つかった個展のためだけに制作された、シルクスクリーンの作品をまとめた一冊が完成。
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《関連イベント》
『ON THE TABLE』刊行記念トークイベント
<出演>
前田晃伸(デザイナー・アートディレクター)
山﨑杉夫(イラストレーター)
内田有佳(編集者・Baci代表)
ゲストは『ON THE TABLE』のデザイナーを務めた前田晃伸さんと、安西水丸塾で学んだイラストレーターの山﨑杉夫さん。この美しい一冊ができるまでのストーリーや、安西さんの作品についてじっくりと語っていただきます。
<日程>
2016年9月23日(金)18:30 OPEN/19:00 START
<会場>
Rainy Day Bookstore & Cafe
東京都港区西麻布2-21-28 スイッチ・パブリッシングB1F
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