10 days 行商日記 in New York #day1
今年6月、安西水丸さんのシルクスクリーン作品をまとめた『ON THE TABLE』が出版社Baciから刊行された。
Baci代表の内田有佳さんは新刊を胸にNYへと旅立った。
届きたてほやほやのNYでの行商風景をお届けします
#出発前日
安西さんが暮らしたNYへ。
安西水丸さんの作品集『ON THE TABLE』をニューヨークの書店に売り込みに行くことにした。この連載はおよそ1週間の滞在を記録する行商日記だ。
なぜニューヨークなのか? 安西さんのファンの方には説明する必要もないと思うが、安西さんは20代後半に、2年間マンハッタンに住んでいた。勤めていた日本の広告代理店を辞めてニューヨークへ渡り、現地で見つけたデザインスタジオで働いていたのだ。イラストレーター“安西水丸”が誕生するずっと前のことである。なので『ON THE TABLE』を制作しながら、この本がニューヨークの書店に並んでいたら……とぼんやり思い描くようになったのだ。
ちなみに、安西さんの小説『手のひらのトークン』(新潮社刊)には、ニューヨーク暮らしの様子が綴られている。どこまでが事実か曖昧なトーンなのだが、全編に漂う孤独感は、安西さんが本当に感じたことなのだろう。
さて、行くと決まったら下準備が必要だ。英語版のリリースを作って、10軒ほどの書店にメールでアポイントメントを取ることにした。ちなみに、私の英語は中学1年レベルなので、作品集で翻訳をお願いした知人と、Google翻訳に頼りっぱなしだった。
メールの返事が来たのはそのうち2軒。1軒は「Printed Matter」といって、ZINEや自費出版の本を取り扱っている書店だ。ホームページには「SUBMIT YOUR BOOK」という売り込み方法をまとめたページもある。メールを送ると「ここをみて」という短いメッセージとともに、このページのリンクが送られてきた……。なるほど、この通りに書類を持ってきてね、ということか。事前のアポイントメントは受け付けていないようだ。
もう一軒は紀伊國屋書店ニューヨーク本店。担当者さんから丁寧なお返事をいただいた。もちろん、やりとりは日本語だ。日時を相談して、こちらは無事にアポイント完了。
さらにNYに住む先輩ライターさんが「McNally Jackson」を紹介してくださるという! マクナリージャクソンはノーホーにあるおしゃれなブックショップで、いくつかの店舗も持つ人気店。詳しくは訪れた回で話すとして、このアポイントを取っていただけたことは本当にラッキーだった。
そんなことをしているうちに、日付はもう出発前日だ。スーツケースには20冊の『ON THE TABLE』と、現地の書店員さんに見せるために村上春樹の『夜のくもざる』(平凡社刊)も持っていくことにした。
トランクは完全に重量オーバー……! このトランクが帰りは軽くなっていることを願いながら、機内食に全く期待できない、ユナイテッド航空の飛行機に乗り込んだ。
#day2へ ▷▷
《 INTERVIEW 》
-- 安西水丸『ON THE TABLE』ができるまで --
Baci 内田有佳さん
インタビューはこちら
《プロフィール》
内田有佳 うちだ・ゆか
1982年生まれ。編集者。Baci代表。 大阪芸術大学映像学部を卒業後、編集プロダクション勤務を経て、フリーランスのエディターとして活動する。2016年、出版レーベルBaci(バーチ)を立ち上げる。
http://bacibooks.com/
安西水丸
『ON THE TABLE』
2014年に急逝したイラストレーターの安西水丸。アトリエに残された作品を整理するなかで見つかった個展のためだけに制作された、シルクスクリーンの作品をまとめた一冊が完成。
詳細はこちら
《関連イベント》
『ON THE TABLE』刊行記念トークイベント
<出演>
前田晃伸(デザイナー・アートディレクター)
山﨑杉夫(イラストレーター)
内田有佳(編集者・Baci代表)
ゲストは『ON THE TABLE』のデザイナーを務めた前田晃伸さんと、安西水丸塾で学んだイラストレーターの山﨑杉夫さん。この美しい一冊ができるまでのストーリーや、安西さんの作品についてじっくりと語っていただきます。
<日程>
2016年9月23日(金)18:30 OPEN/19:00 START
<会場>
Rainy Day Bookstore & Cafe
東京都港区西麻布2-21-28 スイッチ・パブリッシングB1F
イベント詳細はこちら