首藤康之 × 操上和美 [DEDICATED to 美しい身体]
操上 しなやかな筋肉をつけて理想の姿にコントロールしたいと思っているんです。人は歳を取ると理想とはかけ離れた肉体になっていく。時間というのは時には残酷なものなんです。
首藤 操上さんにとって理想の身体とはなんですか?
操上 自分の中にあるんです。贅肉をいかにそぎ落とすか、それとぼくは写真家という職業上、敏捷性、動くということが不可欠なんです。その能力の維持ですね。歳取ってきたからダメなんだということを理由にあげたくない。スタジオでもロケでも現場はいつも過酷なんです。また写真を撮るということでもっとも大事なことは対象自体だけではなく場の空気を感知しなくてはいけないと思う。
ぼくはその感知する能力は肉体と関係あるような気がするんです。愚鈍な肉体では写真家はいけないと思っているんです。 首藤 動けなくなることを潔しとはしないんですね。対象と肉薄するという緊張感でしょうか。改めて操上さんに肖像写真を撮られてその切迫感を強く感じました。
操上 ダンサーの方は一番切実だと思うけれど、老いって時間と引力の戦いなんです。地球の引力からの離脱というのがダンサーの究極の美ではないですか?
首藤 重力に虹を描くことですね(笑)。ぼく自身も理想の美しい身体は漠然とあるんです。自分の身体は嫌なんです。常に変化をしたいと思っている。これじゃない身体をいつも求めているような気がします。ぼくの写真を操上さんに最初に撮っていただいたのが一九九六年のことです。ファッション雑誌の仕事で、海外から帰国したときで今でもよく覚えています。できあがりの写真を見て、違う自分が見えたと思った。
今までもいろいろな写真家の方に撮られたけれど、初めて自分の肉体が自分に語りかけてきたんです。自分の肉体はこういうメッセージを持っているんだと思った。たえずダンサーは自分の肉体に語りかけているのだけど、写真を通してはそれが初めての経験でした。いつも写真はこの部分に筋肉つけて直したいと思うような嫌な部分ばかり見えるんです。
操上さんの写真には仮面性というものを感じたんです。素敵な経験でした。満足感ではなくほんの少し自信を持ったのです。見かけだけでなく肉体のその先が表現されていた。そのことは自分自身では見えなかったものです。撮影中は緊張して何も覚えていなかった。写真の上がりを見てそう感じたんです。
操上 最初の出会いはとても印象的でした。首藤さんから肉体そのものの光を感じて、すごいと思ったんです。もっと撮りたいと思った。首藤さんにオファーして一冊の写真集を作らせていただいた。それが『POSSESSION』です。若くみずみずしいだけではなくすごみさえある肉体です。それが今、さらに研ぎすまされた肉体の存在をぼくは表現したいと思ったんです。
本誌(SWITCH vol.34 No.7) でお楽しみください。
※ 掲載内容は本誌からの抜粋です
操上和美写真展 「DEDICATED ― 首藤康之」
2016年6月17日(金) – 7月22日(金) 13:00 – 19:00 月・火曜休
art space AM 東京都渋谷区神宮前6-33-14 神宮ハイツ302
TEL 03-5778-3913
URL: http://am-project.jp
操上和美写真集 『DEDICATED』
2016年6月17日発売 定価 3800円+税 発行 赤々舎
B5変型・128ページ・写真67点掲載・ソフトカバー(スリーブケース付)