東京事変、新作完成までを追う二号連続特集・前編
東京事変は不可思議なバンドである。
才能を持った強大なアイコンの元に、やはり世代も個性も異なる才能の四人が集まっている。その敷居は決して低くは見えないのだが、しかし排他的なスノビズムは皆無で、全員が何らかの形で己の人格をバンドに持ち込んでいる。こう書くと一見理想的なシンフォニーのようだが、その実は時に危うくもある、むしろ非常に希有な均衡で保たれたポリフォニーなのだ。そんなせめぎ合いを笑顔で交わしながら、これまで椎名林檎、浮雲、伊澤一葉、刄田綴色、亀田誠治の5人は、独創性とクオリティをモットーに、その音楽表現を更新し続けてきた。特に前作『スポーツ』は、5人各々が自身の音楽的要素に嘘を付かず、しのぎを削り、補完し注ぎ合うことで、ジャンルを超越したマッシヴなサウンドを確立した記念碑的作品となった。
彼らは今、ニューアルバムの制作を進めている。タイトルは『大発見』という。
現段階では断片ながらもいち早く耳にしたそのサウンドは、またも唯一にして無二のプレゼンスを予感させる、初期衝動のラジカルが満ちていた。そこで小誌は今回、その制作から完成までを追う形で2号連続企画を試みる。かくも人間としての魅力に溢れた彼らの“大発見”までを追うことで、その奇跡のように美しいバンドマジックの秘密を紐解いてみたい。
2011年5月20日発行
特集
東京事変 ビューティフル・ディスカバリー
028 (ロングインタビュー)
椎名林檎[瞬間を生きるために]
035 (モノローグ)
「夜明けのうた」のこと
036 (インタビュー)
浮雲[蒼き雲が流れ行く先]
伊澤一葉[インプロヴィゼーションと色気]
刄田綴色[プレイングリスナーの眺め]
亀田誠治[放熱の秘密、未来の希望]
040 (ドキュメント)
TOKYO INCIDENTS
STUDIO WORKS 2010-2011
054 the HIATUS
IT'S NOTHING BUT MUSIC
060 斎藤誠 ギターを持って旅に出る理由
064 hitomi/渡watary/ハママツトシヒロ&星廻ワカコ/東本三郎
074 立川志の輔
これは落語なのか、と問う声
084 雑誌から生まれた物語ーー映画『マイ・バック・ページ』をめぐって
川本三郎[逮捕まで]
妻夫木聡[沢田という男を演じて]
088 『ドリーム・ホーム』パン・ホーチョン×園子温
090 よゐこ有野の繁栄!オタク王国
092 JEEP WRANGLER SPORT × 『TOKYO!』
094 熊野哲彦(株式会社ベイス代表)
100 小泉今日子[原宿百景]
第50回 goro's ゲスト:高橋吾郎
104 佐内正史[対照]
106 柴田元幸翻訳叢書
アーネスト・ヘミングウェイ 短編・兵士帰る
129 井出綾香[やわらかいうた]vol.2
130 古川日出男[小説のデーモンたち]第4回
142 大森克己「彼女について写真家が知っている2、3の事柄」