特に岩手山には魅かれ、健脚を誇るように何度も山行を決行した。
山に登り、里に下りて、宮沢賢治は見た光景を忘れまいと
一所懸命にスケッチをして詩や童話を生成していった。
たとえば朝の霧の中で、山の一角が白く光って見える。
朝の光がたんに何かに反射しているだけかもしれない。
宮沢賢治はこの光はただの現象ではなくもっと深い意味があると考える。
自然から自分へのメッセージなのだと。朝の山の中にいて心揺さぶられていく。
自分と世界が呼応する瞬間がある。自分はここにいる。世界は目の前に開けている。
自然を知るために、今こそ宮沢賢治の山行を考えてみたい。
宮沢賢治の原風景をとおして、作品の奥にある彼の思いを考える。
見えない世界の不思議を発見する旅へ。
五十嵐大介イラストレーション絵葉書
縦148mm×横100mm
ISBN:9784884185824
2021年11月15日刊行
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見えない世界の歩き方
賢治の故郷・岩手を拠点に活動していた漫画家の五十嵐大介に約1万字におよぶロングインタビューを敢行。代表作の『海獣の子供』『魔女』『ディザインズ』など、賢治作品へと重なるアニミズム的な世界観や独自の言語感覚で描かれる作品の数々を紐解きながら、自身の創作や賢治作品の魅力へと迫る。さらには表紙イラストレーションを含む、岩手に住んでいた頃のスケッチも収録!
宮沢賢治が初めて岩手山に登ったのは明治43年(1910年)6月のこと。盛岡中学2年の博物教師引率のもと、生徒ら80名で登山隊が結成され、夜間に松明の灯りで登って御来光を拝み、午前9時頃に登頂を果たした。この時の感動と興奮から、賢治は山登りに夢中になっていく。
賢治にとって岩手山は、個人的活動として大事にしていた創作の場であり学校では教えられない大切なことを学ばせてくれる、課外授業の場であった。賢治のエピソードとともに彼の足跡を辿ることで、賢治に会いたいと思った。
「銀河鉄道の夜」は英国の児童文学に多い「行きて帰る物語」として読むこともできる。 『宝島』や『ピーター・パンとウェンディ』、『不思議の国のアリス』などを賢治さんは読んでいただろう。
1922年12月3日、仙台市公会堂で開催されたアインシュタインの一般講演に宮沢賢治は行くことは叶わなかった。その6日前に妹トシが亡くなり、賢治は大きな失意のもと、すぐ近くまで来ていたアインシュタインと直接会うことはなかった。「もしもこの二人が出会っていたら、どんな会話をしていただろう?賢治はアインシュタインに何か質問をしただろうか」などと考えてみたくなる。
今年10月に放送となった「SWITCH TV」。俳優・イッセー尾形は番組の中で宮沢賢治の故郷・岩手を旅した。賢治と同じ景色を目にしたイッセーが、賢治の名作を“カバー”し、新たな物語を紡ぎ出す——。
わからないことば、知らないことばが出てきてもあゆみをけっして止めてはいけない。宮沢賢治を読むために大事なことだと串田孫一は言う。1956年に串田が編集した『宮沢賢治名作集』のあとがきから宮沢賢治のパンセを教わりたい。
Coyote No.75
CONTENTS
Cover & Content illustrations by Igarashi Daisuke
8
特集
山行 宮沢賢治の旅
18
interview
五十嵐大介
見えない世界の歩き方
34
poem
宮沢賢治「東岩手火山」
38
fieldwork
岩手山、空の課外授業へ
写真=上田優紀 文=奥田祐也
52
賢治の山旅
54
山と日本人のかかわり
58
essay
池澤夏樹
「銀河鉄道の夜」の夜
写真=阿部稔哉
68
宮沢賢治と
アインシュタインの「屈折率」
文=森田菜絵
74
poem
宮沢賢治
「一〇〇五〔暗い月あかりの雪のなかに〕」
76
cover story
イッセー尾形
再訪としての「銀河鉄道の夜」
86
poem
宮沢賢治
「小岩井農場 パート一」
88
fieldwork
北緯三十九度四十五分の世界
小岩井農場を行く
92
column
小岩井農場
宮沢賢治の時間歩行
構成=野沢裕美
96
cover story
イッセー尾形
再訪としての「小岩井農場」
104
essay
串田孫一
宮沢賢治の一生とその作品
116
fieldwork
晩年
たよりになるのは
写真と文=新井敏記
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3
for Readers
122
Foxfire
True to nature
Vol.9 奥山淳志
124
魔法の竪琴
ケルティックハープ奏者・松岡莉子
写真=朝岡英輔 文=齋藤巧
128
森へ 第4回
青木奈
写真=堀内成郎
138
最初の一歩 第75回
角幡唯介
絵=植田陽貴
142
谷川俊太郎 詩
ハダカだから
絵=下田昌克
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【お詫びと訂正】
『Coyote No.75 特集 山行 宮沢賢治の旅』掲載の「岩手山、空の課外授業へ」におきまして、誤植がございました。
P.40 16行目 誤「安倍孝」→正「阿部孝」
読者の皆様ならび関係各位にお詫びさせていただくとともに、ここに訂正させていただきます。(Coyote編集部)
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