2014年4月、東京・青山の「INTERSECT BY LEXUS」にて、ワークショップ「春風亭一之輔 × テイ・トウワ 落語と音楽の新しい世界を体験せよ」が行われた。日本の落語会においていま最も注目される気鋭の落語家 春風亭一之輔と、DJ・音楽家として世界的に活躍するトップクリエイター、テイ・トウワのコラボレーション・イベント。
今回のワークショップでは、それぞれ独自のクリエーティビティによって注目を集め続ける両氏が、落語と音楽を融合させた新たなライブパフォーマンスに挑戦。先日、「SWITCH」誌上で対談を果たした際に語り合った落語と音楽の共通項を、さらに深く掘り下げる催しがここに実現した。当日のイベントは、演芸場の寄席とラウンジでのチルアウトを融合させたような、ユニークな試みとなった。テイ・トウワのDJパフォーマンスと春風亭一之輔の噺が交互に2回行われ、出囃子「さつまさ」のスクラッチや春風亭一之輔のドライブ感のある噺に会場が沸いた。
パフォーマンス後、お二人と、ミュージシャンの坂本美雨をゲストに迎えた鼎談を実施した。
――おそらく世界初であろう、落語とDJの融合はいかがでしたか?
テイ:クラブとも違う場所だし、踊ることが目的ではないので気を遣ったというか。一之輔さんのお囃子を間違えないように出すのも緊張しました(笑)。
一之輔:最初は会場の空気が硬いので、硬いところを二人でほぐした感じです。
――選曲のテーマはどのような?
テイ:僕はここ(INTERSECT BY LEXUS)の音楽監修をしていて、普段はレクサスに抱くイメージ、つまりラグジュアリーのLというテーマでBGMを選曲しているんです。今日のイベントではちょっと違って、僕の音楽のライブラリから「なごみ」とか「ラウンジ」っていうタグを付けた楽曲を持ってきました。そこからスーパーフリーにセレクトしたという。
――一之輔さんの演目は結婚したばかりの美雨さんに捧げる「粗忽の釘」でしたね。
美雨:ものすごく面白かったです。古典落語だけどほんとうに自由で。
一之輔:犬の「ペロ」は、古典では出てこないんです。昔、くすぐり(アドリブ)でやったらすごく受けたので残してるんですよ。お客さんに乗せてもらって引き出してもらうのがいいんですよね。
テイ:一人だとやらないからね(笑)。
美雨:キャラクターの演じ分けはどうされてるんですか?
一之輔:お芝居と違って役作りはないんです。どちらかというと、冷静な自分がもう一人いて、後頭部からロボットを動かしている感じ。そいつが「いま急ぎ過ぎてない?お客さんついてきてないよ」なんて言ってくる(笑)。テンションが上がってくると自分でも止まらないことがありますからね。
美雨:どれくらいの演目を覚えているんですか?
一之輔:覚えてかけたことがあるのは一七〇ぐらいそのうちいまも出来るのは四◯程度ですね。演目はその場で選びます。噺に入った瞬間に「違うな」ってこともありますよ。でも変えられないから、ペースやテンポを変えて調整するんです。
――「間」ですよね。落語に付き物の「間」はどうやって取るんでしょうか?
一之輔:「間」を取るコツは、根拠のない自信でしょうね。偉そうって言われる人は間を取るのがうまいですから。黙っているのが怖い人よりも、黙っていても大丈夫な人のほうが間に強い。
美雨:目には見えないけど、「間」っていうものがここ(目の前の空間を指さして)にありますからね。それを信じられるかどうかじゃないかな。ラジオだと、リスナーの顔が見えないので一方的に喋ってしまうこともあるんです。たしかに怖いものでもあるけど、人と人が出会ったら自然に生まれる距離と同じことだから、それを大事にすればいいのかな。
一之輔:対象が聞いてくれていると信じるのが大事ですね。あとは図々しさ!
――歌のライブも同じですか?
テイ:美雨ちゃんは自分の体が楽器だから、音の大きさから明るさや暗さといったダイナミクスを自在に変えるんだよね。
美雨:そうですね、それに加えて言葉自体の強さも変えていく。
一之輔:緩急ですよね。
美雨:一之輔さんの落語はまさに緩急でした。それに引き込まれるんです。
テイ:音楽も落語も、緩急が大事だということですね。コーラのビンの流線型のように、美はそこから生まれるのかも?
ジャンルは違えど、共通項をお互いに感じた3人が、更なるコラボを生み出す事を期待したい。
INTERSECT BY LEXUSは、「都市とつながり、人と人、人とクルマが交わる」をテーマとし、デザインやアート、ファッション、カルチャーなどを通じて、LEXUSが考えるライフスタイルを体験できる。(
http://www.lexus-int.com/jp/intersect/tokyo/)
- Posted on 2014/06/02
-