週末のふたつのスタジアム

2014/05/20

 桜はとうに散ったものの、日が落ちるとまだまだ寒さを感じる4月後半の週末。土曜、日曜と2日間続けてスタジアムを訪れた。4月19日、東京・味の素スタジアム。約4万人の大観衆で埋め尽くされた広大な観客席の光景は壮観で、ピッチでプレーする選手たちの一挙手一投足に合わせて歓声とため息が観客席で交差していく様は、試合それ自体にも負けず見ごたえのあるものだった。
「あの選手のプレーが観たい」「このチームが勝つところを観たい」「どんな試合になるのか面白そう」「ゴール裏でみんなで一緒に応援したい」それぞれ思いは違えども、「サッカーを楽しむため」に4万の老若男女が週末にスタジアムに向かう。サッカーが好きなら、その事実だけで少し幸せな気持ちになるだろう。
 翌4月20日、神奈川・相模原ギオンスタジアム。試合開始2時間半前のスタジアム周辺はまだ人もまばらで、熱心なサポーターがゲート近くで談笑している程度。アウェーのサポーターとホームのサポーターが互いのチーム状況を話し合っていたりと、どこか牧歌的な雰囲気が漂う。試合時間が近づいてきても、その空気は変わらない。屋台の焼きそばに並ぶ家族連れ、その横では4、5人の小学生のグループがサッカーボールを蹴り合っている。パスの練習をする父子の後ろで、若いカップルがピザを頬張る。この日の観客は約3,200人。スタンドにもまだ余裕がある。
 見方によってはそれは対照的な2日間だが、帰りの電車に揺られながら抱いた充実感は、どちらも少しも変わらないものだった。

PHOTOGRAPHY:OKUYAMA YOSHIYUKI
TEXT:SUGAWARA GO

「SWITCH」Vol.32 No.6(フットボール・ピープルたちのコミュニケーション術)


Posted on 2014/05/20