SWITCH特集 のん 7つの冒険
SEVEN WONDERS OF NON刊行記念
のんトークイベントレポート
@代官山蔦屋書店
7人の写真家がのんの持つ7つの顔を表現する『SWITCH Vol.36 No.2 特集:のん 7つの冒険 SEVEN WONDERS OF NON』が1月20日に発売しました。刊行を記念して1月21日、東京・代官山蔦屋書店にて行われた、のんのトークイベントの模様を余すところなくお伝えします。
――今回の特集は女優・声優のみならず、ミュージシャン、絵描き、ファッションデザインなど多岐にわたり活動するのんさんの現在進行形を描写すべく、7人の写真家による、7つの異なるテーマ・シチュエーションでの撮影を敢行しました。多忙なスケジュールの中、すべての撮影をわずか3日間で行いました。
のん その3日間はすごく充実していました。それまで、いろいろな職種の仕事がごちゃまぜに入っていたので、3日間「SWITCH」に集中して仕事をするというのがすごく刺激的で。お仕事なのに、とてもリフレッシュした気持ちでした。
――実際に色々なことをするのは大変なのでは?
のん 大変ですね。自分で自分の首を締めてしまっているというか(笑)。「こんなに大変なのか!」と気づくことも多くて。それでも楽しいので、やりたくなっちゃうんですよ。
――今日はそんなのんさんがリフレッシュした気持ちで臨んでいただいた、それぞれの撮影について振り返っていきたいと思います。
■PLAY――欲張りなんです
写真・高木将也
――まず最初にミュージシャンとしてののんさんを表現した「PLAY / ギタリストの冒険」から。写真は高木将也さんが担当されました。撮影場所はレコーディングスタジオ。のんさんはちょうど新曲のレコーディング中でした。レコーディングのときはどのように臨まれているのですか。
のん 結構リラックスしているかもしれません。そのときは、ずっと一緒に制作を行っているスタッフの方とレコーディングに入っていたので、そんなに緊張はしなかったんですけど。ファーストシングルやセカンドシングルのときは、高野寛さんや大友良英さんがディレクションをして下さっていたので、すごく緊張しました。
基本的にはブースの中に入って、ディレクションをして頂くときにも、わたしは録音ブースに一人でいるのですごく気が楽です。録音ブースの”死角”を探して、たまにその隅っこに入って休んだり出来るので(笑)。
――1月1日にはセカンドシングル『RUN!!!』が発売されました。そして今はファーストアルバムを制作されているのですよね。
のん はい、今春にはリリースしようと思っています。撮影のときは、アルバムに収録する歌を歌っていたんじゃなかったかな。
――差し支えない程度に、今回のアルバムにはどんな方が参加されているのか教えていただけますか。
のん 今回も豪華です。矢野顕子さんに楽曲の提供をお願いして、あとは高橋幸宏さんにもお願いしました。
――アルバム全体はどのようなイメージなのですか。
のん いろいろな曲を詰め込んでいます。矢野さん、幸宏さんときて、まだまだ秘密の方もいらっしゃいます。のんが作った曲も3、4曲入っています。フライングで2017年の年末に「のんフェス」を開催した際に演奏しましたが、そのときのものなどを詰め込んでいます。
――「のんフェス」もすごかったですが、ご本人的にはいかがですか。
のん めちゃくちゃ楽しかったですね!最初は「のんフェス、やりましょう」となったときに「出来るんだろうか……」と思ったんです。いきなり音楽デビューして、CDを一枚出して、フェスを開くなんて。本当に「RUN!!!」というか、走るように色々なことに挑戦してしまっていて。生意気で嫌われないかなって思っていたんです。
――それはインタビューのときにもおっしゃっていましたね。
のん 本当ですか。
――嫌われるのが気になるって。
のん そうなんですよ、わたしすごく、“気にしい”で、欲張りなんです。すべての人に「面白い」と思ってほしい欲望が渦巻いていて。でも、フェスには素晴らしい方々にご協力頂けたので、本当に嬉しかったです。
――先ほどちらっと耳にしたところ、映像化の話もあるんだとか。
のん やも、しれません。いらっしゃっていた方いますかね、「のんフェス」。
のん ありがとうございます(笑)。
■WEAR――学生さんですか?
写真・若木信吾
――次は「WEAR / 服づくりの冒険」。写真家は若木信吾さんです。ご自分で作られた服を着て撮影しました。これまで20着以上の洋服を製作されたそうですね。
のん はい、お家でカタカタ作っています。
――撮影の際に着用された衣装は新しいものなのですか。
のん 比較的最近のものです。スケジュールの関係上、だいぶ間が空いてしまったのですが、今も製作途中のものがあります。それは直線の布を使って製作しています。布を丸く切ったりするのではなく、まっすぐなものを直線縫いでつなぎ合わせて作る方法を応用して作っています。
――そのうちファッションデザイナーとしてののんさんを目にする機会が出てくるのではないかと思います。
のん その新作の生地を買いにいったときに、新鮮だなあと感じたことがあって。ある生地屋さんに行ったのですが、冬物の厚手の布が全部高くなっていたので、安い端切れのコーナーを見たんです。「あ、これいいな」と思って、レジに持って行ったときにレジの店員さんに「~~ですか?」って訊かれたんです。それで、「え、なんですか?」って聞き返すと、「学生さんですか?」って。
のん 「あ、違います」って応えたのですが(笑)。学生さんだと学割で端切れの布とかが安くなるみたいで。そのときちょっと子どもっぽい服装していたから学生に見えたのかなって。
――気づかれなかったんですね。
のん そうみたいです。そのときの自分の服装は、自分からも見ても学生っぽかったので。あと端切ればっかり買っていたからそう見えたのかなって。学生さんですかと聞かれるのが新鮮でした。
■ DRAW――美大に行きたくて
写真・新津保建秀
――次は新津保建秀さん撮影の「DRAW / キャンバスの上の冒険」です。女子美術大学に行って絵を描かれました。のんさんが画材を購買部で購入したのですが、そのときに蛍光の色が入っていましたね。
のん そうですね、蛍光の色が入っていたと思います。
――それで今回の表紙の文字は蛍光色にしたんですよ。
のん ああ、そうだったんですか!すごい!細やかな演出、ありがとうございます。
――蛍光色が好きというのには、何か理由があるのですか。
のん なんででしょう、目立つからですかね? こういう暗い赤とか黒とかの中に入り込んでくる明るい色は、コントラストがあって好きなんですよね。
――暗い部分と明るい部分が混在している。
のん そうですね。ここで描いた作品は、上から無理矢理に塗ったら面白い感じに仕上がったので、お気に入りです。
――撮影場所はすごい部屋でしたね。
のん 本誌ではのんしか写っていないのですが、一つの教室の中にアトリエのようになっているスペースがいくつもあって、女子美の学生さんに混じって描いていました。
――同じような状況で描いている人が10人くらいいましたよね。
のん いらっしゃいましたね。すごく緊張しました。部外者が足を踏み入れていいのかって。
――そのときちょうど卒業制作の追い込みの時期だったんですよね。のんさんが入ってきても誰も反応しないくらい集中していました。昔は美大に通って、絵を描いてみたいと思ったこともあったそうですね。
のん そうなんです。高校三年生のときに美大に行きたくて、まさにこの杉並の女子美のオープンキャンパスに行って、デッサンのワークショップに参加したりしました。撮影のときはすごく女子美の先生が褒めてくださいました。のんフェスに来て下さった方もいらっしゃって。お会いするたびに、「ぜひ女子美に入って欲しい」って(笑)。は、入れるものなら……、という感じです。
――あとはアート関連だと、先日パリに行かれました。そのときはいかがでしたか。
のん パリは新鮮でした。初めて行ったのですが、お金を掏られたり、鞄を持って行かれたりしないか恐怖で、厳重にコートの中に鞄を背負ったりしていました。結局、そんなことは全くなくて平和だったんですけど(笑)。
――観光にはいかなかったのですか。
のん 行かなかったですね。お仕事で行かせて頂いていたので。でもすごく楽しかったのです。ルーブル美術館の地下にある「カルーゼル・デュ・ルーヴル」という場所に私の絵が飾られたので、それを見に行ったのですが。見つけた途端に気持ちが高ぶるというか、興奮して。嬉しかったですね。
――展示された作品はどのようなものですか?
のん 大きいキャンバスに絵を描いて、穴を開けて、キャンバスに開けた穴から覗くと、裏側に細工したものが鏡で見えるという、ちょっと変わった作品です。現地で覗いてみたら、キャンバスの後ろに付けた絵の具やら手袋やらの一部が、ポロっと落ちていて。でも奇跡的にわざとやったように見えてすごく感動しました。
――いつか日本でも展示の機会があるといいですね。見たい方が多いと思います。
のん そうですね、展示したいです。
■LEARN――高座に“お邪魔します”
写真・池田晶紀
――次は落語。池田晶紀さんによる「LEARN / 落語入門の冒険」です。新宿の末廣亭に行ったり、落語家の柳家花緑師匠にお会いしたりしました。着物も花緑師匠のものをお借りしたりして。
のん 花緑師匠がスタイリングして下さったのですが、最初に花緑師匠が選んでくださったのが紫色の着物でした。緑か紫で悩んだんですよ。それで、最初紫が可愛いなと思って着てみたら、すごく“着せられている感”があって。大御所感というか。
――大御所感(笑)。
のん 身の丈にあっていない感じというのか。さすがにこれはまだ着られないと思って、ビクビクしながら緑の着物を着ることにしました。
――高座にも上がっていましたね。
のん なんだか不思議な感じでした。普段は落語家さん達を見ている側だったので、高座に上がるなんて。どこか神聖な場所という感じだったので。「お邪魔します」というような、むず痒い感じがしました。でも、おそばの演目も再現したりできて、楽しかったです。
――カメラマンの池田さんものんさんを乗せるために、即興で落語をされていましたよね。ご本人はやるのは初めてだとおっしゃっていましたが。
のん 「背伸びたんじゃねえか?」「いや、伸びてねえだろう」「いや、絶対伸びただろう」みたいなことをペラペラ喋ってくださって。それに合わせてのんがパントマイムするみたいな感じでした。池田さんは天才なんじゃないかと思いました。なんなら池田さんがやればいいのにって(笑)。あと、池田さんは個人的にはガッツポーズがすごいツボで。
――池田さんの?
のん 「よしっ!」って。それをずっと真似していました。
――そこがツボだったんですね。
のん 会場に来ている方々は誰も見たことないから、誰にも伝わらない(笑)。
――それでは今度のトークやイベントのゲストに池田さんを呼びましょう。
のん そうですね、ぜひお話してみたいです。
■WALK――パリ前日に「メルシー」へ
写真・川島小鳥
――次は「WALK」。表紙も撮影いただいた川島小鳥さんによるものですね。“日曜日の冒険”というテーマを元に、日常の中のちょっとした風景を切り取るという設定です。早稲田のあたりで撮影したのですが、当日は本当に日曜日だったんですよね。
のん すごく良かったですね。散歩しながらの撮影で、すごく楽しかった。
――日曜ということもあり、歩行者天国になっている道などで撮影をしたりもしましたね。
のん 楽しかったですね。歩行者天国の場所で、ブルーシートを敷いて、子どもたちと工作をするなんてことも催されていて。
――のんさんは参加したそうでしたね。
のん 道路の上で工作なんて、面白そうだなあって思って。なんかシュールな感じで。
――フリマとかも好きなんですか。
のん フリマはあんまり行ったことはないですが、いいですね。
――あとはラーメンですね。「メルシー」で。
のん ああ、ラーメン! ちょうどパリに行く前日だったんですよ。そんなときに「メルシー」というラーメン屋さんに行くことができて。全然パリ感はなかったのですが(笑)。すごく運命的な気持ちになりました。パリでは「メルシー」って言いまくりました。
――良かったですね。小鳥さんは今回に限らず何回か撮影されていますよね。
のん そうですね。小鳥さんとの撮影は毎回楽しいです。独特の世界観に入っていくライブ感があります。パッと場所を見つけて、「その間に座ってください」って。
――その場所で、その時間にしか撮れない。
のん 本誌では猫と並んだページの写真を撮影したときですね。めっちゃ可愛いですよね、この猫。そのせいで毎回悩んじゃいました。猫みたいにいたらいいのか、落ち葉に紛れる気持ちでいたらいいのか、とか。
――撮られているときは、どうすればいいんだろう考えることは結構ありますか。
のん そうですね。上手くなりたいんですけど、毎回これでいいのかなって思うのはありますね。あと、ラーメンは本当に美味しかったです(笑)。
――それは良かったです。あのお店、本当は日曜日お休みなんですよ。それを撮影のために特別に開けてもらって。気合い入っていたみたいです。
のん 美味しかった。
■ACT――男の人にライバル心
写真・神藤剛
――あとは撮影スタジオで撮ったものが2つあるのですが、1つが「ACT / トランスジェンダーの冒険」。男の子と女の子を各7キャラクターずつ演じていただきました。これは神藤剛さんに撮影してもらったのですが、撮影は大変でしたね。
のん 時間がタイトだったこともあって、ドタバタでしたね。早着替えにメイク直し。でも、私よりもヘアメイクさんとスタイリストさんがバタバタしている感じでしたが。
――スタジオの1階部分が撮影スタジオで、メイクルームが2階だったんですよね。その2箇所を階段で繋ぐという造りだったのですが、撮影はいかがでしたか。
のん パパパパパッと上がって、メイク直して、髪型を変えて、パパパパパッと1階に降りてということの繰り返しでした。後半、息が上がってきて。撮影のときは動きを止めるために息を止めたりするんですけど、息を止めていられないというか、座っていられないというか。「もういいですか!?」って(笑)。
――色々なキャラクターを演じる中で難しかったものもあると思います。
のん これ(本誌P42上段右)はアートな女子の対比の男子なんですけど、最初はアートな感じとか、カチッとした感じだったんですが、実際に出来上がった写真を見るとお笑い芸人さんにも見えるし、成金親父にも見えるし、不思議な感じになっちゃいました。でも、面白い感じに仕上がってよかったと思います。
――このテーマのセレクトは結構こだわっていましたね。
のん そうですね。ここはグラデーションになっているイメージだったので、隣り合う男子と男子はどうやって演じ分けるのか、という感じでした。
――男の子に見えるっているか、イケメンに見えるなんて声もありますよね。
のん ああ、そう言ってもらえると嬉しいです。
――男の子を演じるってことに関してはいかがでしたか。
のん 楽しかったです。男の人に対してライバル心があるので。
――本誌をお読み頂くと分かるのですが、インタビューの際もそうおっしゃっていましたね。
のん いろんな方達を想像しながらやっていました。これ(本誌P41上段左)は衣装的にRADWIMPSの野田洋次郎さんを想像してみたんですけど難しかったですね。
これ(本誌P42上段中)とかは髪型とかで、ちょっと矢沢さん。
こっち(本誌P42下段中)の女の子とかは野宮真貴さん。
一番「これはイケるのか?」ときつかったのは、このぶりっ子(P41下段左)。のん的には新鮮だと思うんですよ。一番難しかったです、ぶりっ子。
――ご自分のキャラからは一番遠い。
のん そうですね(笑)。
――でも、この企画は面白かったですね。
のん 面白かったですね。やっていたら面白いのですが、研究しなきゃなとも思いました。
■ FLOAT――永瀬さんとワルイちゃん
写真・永瀬沙世
――最後は「FLOAT / 未来への冒険」ですね。最初このコーナーは「FUTURE」としていたのですが、最終的に全タイトルを動詞に統一するために「FLOAT」としました。レトロフューチャーをテーマに写真家の永瀬沙世さんに撮っていただきました。撮影はすごかったですね。
のん すごかったです。あのスタジオに敷かれていたのはなんだったんですか。
――あれはミラーシートといって、鏡面になるシートを床に敷いたんですよね。これは永瀬さんが少し前にやった展示で、会場にミラーシートを床に敷いていたんです。それが今回の企画にマッチしたので、今回も取り入れたということです。スモークも焚いてましたね。
のん 焚いてましたね。スモークも好きでした。衣装も未来的な感じで。あとお気に入りなのが、このコロンとページを転がるイメージの構成です。
――そうです、本当はこのページ(本誌P58-59)は縦に見るべきページなんですよね。
のん 写真を反転させて掲載するアイデアはすごいですよね。永瀬さんとの撮影は3度目くらいでした。
――今回の写真家の中では唯一の女性です。
のん 永瀬さんと初めて撮影をしたときに、のんが作った「ワルイちゃん」というキャラクターのキーホルダーをスタッフがカバンにつけていたんです。それを永瀬さんが見て「ええ、これすごい好きなんですがどこで売っているんですか?」とおっしゃっていて。のんが作っているって知らずに、LINEスタンプを使ってくださっていたんです。すごく嬉しくて「ぜひ使ってください」ってワルイちゃんの缶バッジを差し上げたら、ずっとマフラーにつけていて下さいました。嬉しかったです。
――今はワルイちゃん以外にもキャラクターは作られているのですか。
のん そうですね。キャラクターも発展させたいですね。
■2018年の抱負
――では最後になるのですが、のんさんの2018年の抱負を教えて頂けますか。
のん 今年はアルバムが出るので、それに合わせてツアーをやりたいなと計画しています。あとは、のんが映像を作る企画があって、それを今編集中で、面白くしたいなあと思っています。一言でまとめないといけないですよね(笑)。そういう“面白いっぽい”ものをみなさんに楽しんで頂きたいです。頑張ります!
――ありがとうございました。のんさんでした。
のん ありがとうございました。
▶︎『SWITCH Vol.36 No.2 のん 7つの冒険 SEVEN WONDERS OF NON』
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