言葉に対するこだわりの源
──美しい言葉の響きを大事にしているんですね。
そうですね。それはこれまで自分が読んできた本とかへのリスペクトみたいなところもあって、だからこそ若者言葉みたいなものはできるだけ使わないようにしていて。もちろん、今の時代のキーワード──たとえば、iPhoneとかタブレットみたいなワードを取り入れることは今後あるかもしれないですけど、それ以外の部分ではしっかりとした言葉遣いをしなくちゃいけないと思っています。
──自分が書いたリリックに普遍性を持たせたいということ?
そういう気持ちもありつつ、でも一方で俺たちと同世代の人が「確かに!」と思うような部分もあるかなとは思います。やっぱり自分自身も今この時代を生きているわけだから、自然と世相を反映したようなリリックになっているとも思うし、でもわざとらしく今の時代に乗っかったような言葉を使いたくはないですね。
──さきほど読んできた本の影響もあるとおっしゃっていましたが、普段からよく読書はしているんですか?
最近はあんまり読めていないんですけど、小学校ぐらいの時からずっと本の虫でしたね。
──好きな作家などはいますか?
特定の作家さんを重点的に読むというよりは、面白そうだなと思うものを片っ端から読んできた感じです。小学生の頃はハリー・ポッターシリーズのような児童書を読んでいて、小6の時には『池袋ウエストゲートパーク』にハマりました。入り口はテレビドラマで、好き過ぎてDVDボックスを誕生日に買ってもらったぐらい(笑)。そういうきっかけがあり、石田衣良さんの作品はかなり読んでいます。そこから今度はレイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウのシリーズや『ライ麦畑で捕まえて』を読んで。あと、俺は『星の王子さま』のサン=テグジュペリは素敵な作家さんだと思います。特に『夜間飛行』は最高の本だと思う。
──小説以外の本はどうですか?
自伝的な本も好きですね。自伝は、その人の人生に起こったことを書いていく、いわば冒険潭だと思っていて。最近印象的だったのは小澤征爾さんが書いた『ボクの音楽武者修行』。小澤さんは25、6歳の時に指揮の修行をするために原付一台で貨物船に乗ってフィリピンとかを経由してフランスを目指すんです。そこで指揮の大家みたいな人に師事して、コンクールに出るといきなり賞を獲ったりする。俺と同じぐらいの歳でヨーロッパに上陸した瞬間からすでにカマしてたんだ、最初から“世界の小澤”だったんだ、と思って、衝撃を受けました。他にはパティ・ボイドというジョージ・ハリスン、エリック・クラプトンといったロックスターの妻だった人の自伝もすごかった。彼女は白人なんですけど生まれがケニアで、地平線の向こうに太陽が沈むのを見るのが日常だった、みたいなことも書いてあって、すげーなと思ったり。あとはマイク・タイソンの自伝も面白かったかな。自分はこれまでの人生でそんなにたくさん旅をした経験があるわけではないんですけど、映画だとロードムービーが好きだし、流浪することに対する憧れを高校生ぐらいからずっと抱いているんですよね。誰かの自伝を読むことで自分もその人と同じような旅を擬似体験できるというか。もちろん今の俺はバンドマンですから、ツアーでいろんな場所を旅することもできる。それはバンドマンという職業の醍醐味のひとつだと思います。
▼YONCE’s Favorite Books
①J・K・ローリング
“ハリー・ポッター”シリーズ
②石田衣良
“池袋ウェストゲートパーク”シリーズ
③レイモンド・チャンドラー
“フィリップ・マーロウ”シリーズ
④サリンジャー(訳:野崎孝)
『ライ麦畑でつかまえて』
⑤サン・テグジュペリ
『星の王子様』『夜間飛行』
⑥小澤征爾
『ボクの音楽武者修行』
⑦パティ・ボイド、ベニー・ジュノー/訳:前むつみ
『パティ・ボイド自伝 ワンダフル・トゥデイ』
⑧マイク・タイソン
『真相──マイク・タイソン自伝』
▼プロフィール
YONCE
1991年、茅ヶ崎生まれ。かつて組んでいたOLD JOEというバンドの解散を機に、Suchmosでの活動に専念することに。現在、Suchmosのセカンドアルバム『THE KIDS』が発売中。3/2からは“TOUR THE KIDS”がスタートする。
www.suchmos.com
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